短歌講座作品(1月)2026年
ラインにて送りし短歌の感想は二年を迎える詠み婆の杖
実家での年始の集い賑やかに席に広がる幸せ扇
中村ゐく
三年目嫁と孫との餅つきは段どりもよく仕上げてくれる
婚礼に何がいいかと尋ねると「若い方ですか?」と問われる
大櫛登美子
焼き上げるいちごタルトの誕生日切り分けるまも歌声続く
猿田彦みちひらきの社に並ぶ色それぞれ選び歩み出す道
千葉由子
好きだった抹茶色のコンバース五度履き捨てた足が痛くて
うろ覚えの冬の星々仰ぎ見て午年の君と並んで歩く
成岡真清
「松阪の第九」に来られたXの友と一緒に写真に収まる
年明けに声が出ないを歎くより年末は出たと我が喉褒める
相口 学
箱を開けワァーと喜ぶ姿見てばあばサンタの顔がほころぶ
正月の片づけしながら次々と届くメールを腰かけて見る
髙橋公美
柿の葉のカラカラカラと転げ舞ふ音に続ひてあれは軽トラ
わが老ひは気づかぬうちに傍に来て家族の前であるまま見せる
瀧本泰介
短歌講座作品(12月)2025年
アンコールの曲は「高校三年生」手拍子の席十代の顔
主人公再春叶え夢舞台愛の替え歌目閉じて聴く
中村ゐく
餅をまく宮司の掲げる大てびら「よし!とったる!」がほんとになった
晩秋の夕陽を浴びた蜂屋柿軒に吊るされ飴色になる
瀧本泰介
いつもより静かな空気を感じとりゴミ出しの朝祭日を知る
念仏を唱える母の隣にはおさがりを待つ愛犬の「福」
髙橋公美
炬燵猫日がな居てねと願うのに黒毛スルリと飛び跳ねていく
登山家の娘に捧げた大腿筋「象の背」登って海に出会って
成岡真清
三月前「同じ町内よろしく」と話したばかりの旧友が逝く
網戸にて即かず離れず居る様を毎日じっと眺め居る我
相口 学
「好きなだけ切っていきな」と友の庭クロガネモチはクリスマスカラー
閉校に半世紀ぶりに立ち寄ると錦秋の中にポプラ見つける
大櫛登美子
夕空に三日月よりも細い月眺め見ながら家へと帰る
「まだかい?」と心の声が出てしまうブロッコリー苗覗く畑で
川岸有佳子
短歌講座作品(11月)2025年
腕を組み牌筋見抜く父の前かつての席に息子が座る
湯気の先父母の笑顔は変わらずに四十路の私また子に還る
千葉由子
めいめいが柿の皮むき部屋へ去る包丁だけが個数知ってる
ゆるやかに四十九日が過ぎてから父への言葉がチリチリ積もる
成岡真清
見上ぐれば月煌々と山の端に今宵は素直に少年にならむ
陽が昇り縮かんでいた両腕を空に広げて気合を入れる
瀧本泰介
文化祭展示作品すばらしき我が師の短歌をカメラに収む
畑隅で腰休め見る田舎道の白線に沿い列なすバイク
中村ゐく
飯高の自然のなかで摘んできた好みの草花いけて楽しむ
友が逝き迎える秋のさびしさよ残りしラインをじっとながめる
大櫛登美子
カメムシが嫌がる洗剤ないものか服干し思う霜月の朝
週イチで第九の練習行ってます車の中でもゲッテルフンケン
相口 学
衣替え秋がとばされて間に合わず半袖・フリース タンスでまざる
落花生を塩茹でにしてテーブルに互いに手が出て殻山盛りに
髙橋公美
卒業式
まんまの制服かごにあり高校生の匂い残して
足首をヒルに噛まれて腫れたこと言う夫おらず留守居の夜に
川岸有佳子
短歌講座作品(10月)2025年
ソファーの下ビー玉ひとつ忘れ物ばらまいた顔思い出してる
コオロギが秋を知らせに我が家にも追いかけっこして手カゴで外へ
髙橋公美
縁側に秋風そよめき寝転んであずきバー食べる時の幸せ
お彼岸に畑で採れた茗荷のせ薄桃色のお寿司供える
川岸有佳子
研修で台湾へ行く子を想いグルメガイドに手が伸びてゆく
鶏口を望まぬ性でありながら指揮棒を振る君美しき
成岡真清
ウィンズのチャリコンぜんぶ楽しんでわずかの支援募金の箱へ
猛暑耐え腰も曲がりし秋桜の赤白ピンク蝶乗せゆれる
中村ゐく
処暑になりツクツクボウシの声聞けど三十五度の気温は続く
さあ作ろうみょうがとしょうがの甘酢漬けトントントンと弾ける拍子
大櫛登美子
インバウンドに英語を話す車掌見て次は車掌になりたく思う
真っ先に目に飛び込んだ空席の優先シートに初めて座る
瀧本泰介
野郎でもメイクの話を聞いた日は鏡の前であれこれしてみる
ミミファソソファミレドドレミミレレいざ半世紀ぶり楽譜を開く
相口 学
短歌講座作品(9月)2025年
お盆過ぎ一人昼食いただけばコップの氷カランと音する
サルスベリの花のピンクを染めたくて絹の切れ端汁に漬け込む
川岸有佳子
夏の陽を背に受け稲を刈り終えて汗を拭きつつお茶でカンパイ
合言葉のように会うと「暑いなあ」早く言いたい「涼しなったな」と
髙橋公美
離れ宿ゲストと煙の輪の中で肉好き娘が旨そうに笑む
黄金の命の海で稲穂刈る四肢の力が続く限りに
成岡真清
娘の背ひとり初旅横浜へ振り向くことなく改札抜ける
タンデムで夏を駆け抜け茶倉駅クワガタ見つけ子どもに還る
千葉由子
生まれ来て五十日余で逝きし児に五十年余を見守られる日々
練習日ソプラノ我の音合わずみんな笑うて楽しくラララ
中村ゐく
半世紀を超え集った同窓会顔見て「ええっと?」名札見て「ああっ!」
小二から高一にまでワープした君との会話をしばし楽しむ
相口 学
焼肉を頬張る子等の食欲に箸を休めてビールだけ飲む
定番のメニューを楽しみ帰り際涙を見せし夏は終わりぬ
瀧本泰介
初盆にふるさと訪ね橋わたり母の想いの御先祖さまに
あと三日置きたいところの金うりをサルに「お先に」取り入れてくる
大櫛登美子
短歌講座作品(8月)2025年
かけ声に合わせて伸ばす背と腰にもうしばらくの猶予を頼む
灼熱を逃れ飛び込む瀧原の社の参道ヒグラシの鳴く
瀧本泰介
一つ舞うホタルが空の夫近く心配要らん楽しんどるで
生終えたトンボに群がる小蟻達脈々と繋ぐ命のバトン
中村ゐく
カチカチのかんぴんたんな真夏日に父の好んだサルスベリ咲く
潤いを少しももらえず枯れた花青サルビア「尊重」の意味
成岡真清
めんつゆで初めて食べるジュンサイは薬味の中で一番となる
かぶってる帽子をさがしウロウロとこれも暑さのせいにしておく
髙橋公美
柵越しにブルーベリーを分け合ってこっちはわたしそっちはヒヨドリ
千日紅母が好きなら私もと言えば良かった帰らぬ夏の日
川岸有佳子
外圧に抗う演説火焔なり蝉の声さえ飲み込む程に
夏休み息子の作る卵サンド黄の欠片さえ愛おしい跡
千葉由子
梅漬けを三日三晩の土用干し猛暑の中で上下を返す
吾の好きな上位に入るあじさいが日照りを受けてうなだれて咲く
大櫛登美子
寿大学で足裏じっとのぞき込み「今日の私はピンク色だわ」
足裏で健康チェックを済ませたら足湯に浸かってまったりタイム
相口 学
短歌講座作品(7月)2025年
夕涼みしたくなるよな宵の口サッシの硝子に馴染みのヤモリ
古希過ぎて背なの丸みを指摘され痛み堪えて姿見をする
瀧本泰介
他愛ない会話の相手実家義姉「気つけなあい」と亡き母の如
カタバミの花は可愛いと思えども憎きと掘り抜く土深き球
中村ゐく
入選の虫歯予防の絵の前で大口開けて小五は笑う
家族みなラーメン二郎にたじろぎてもやしの壁に箸は進まず
千葉由子
富永の遺跡はどこかな土を掘る乾いた穴に汗水落ちる
野球部に入った息子が髪伸ばす令和なのかとバリカンしまう
成岡真清
猛暑日の冷やし中華の昼食に今年も出番多くなりそう
孫ニヤリ水たまり見つけ大ジャンプはしゃぐ姿を暫し見つめる
髙橋公美
ほととぎすうぐいすひばりかっこうと鳴きの競演ふくもとの里
「おなりだけ出来たらええ」となぐさめて去り行く友の足はかろやか
※おなり・・・ 炊事のこと 小西みや子
キミ逝きて網戸で眠る快適を久~しぶりに味わってます
ただいまとあのカエルくん座ってるそっとタオルを取り入れる午後
相口 学
朝五時に「テッペンカケタカ」で目を覚ましコーヒータイムは「ホーホケキョ」
年かさね野菜を作る炎天下水筒腰にしばしば休む
大櫛登美子
短歌講座作品(6月)2025年
エンドウのレシピ見ながらすじを取りみどりづくしの料理並べる
畦刈りは初心者なので作業後の文句一切受け付けません
髙橋公美
目の覚めて朝一番に思うのは空の模様と仕事の流れ
女性かなポニーテールのライダーが166を吹っ飛んで行く
瀧本泰介
はじめての短歌を記念にと赤色紙 書道習いし友に依頼す
くちばしを揃えて餌乞うツバメの子無事に育てよ巣立ちの日まで
中村ゐく
川さつき摘んで食べてた学童期のほせきといえば煎ったそら豆
年重ね技量少なし吾のうたは古き言葉と思い出多し
小西みや子
まぶしさを探しに出れば雨が降る麦秋ひとつ見つけられずに
酒の香に小皿を囲むキッチンでジュース片手に彼は大人顔
千葉由子
コココココ鶏の声聞きながら腕を組んで水田眺める
接戦のああ接戦を走り抜き歴史は動く赤組の勝ち
成岡真清
孫達に好みの団子をお土産に店の先から財布は緩む
吾の友とトンネル超えてドライブに出口に向かうと深緑のアート
大櫛登美子
兆しあり前夜元気が翌朝は動かぬポットに父を重ねる
タオル干しにカエルくんのただいまを待ちつつ今日もタオルをかける
相口 学
寿大学の工場見学カメヤマでビールにエダマメもローソクになる
関宿をおじさんガイドと歩き行く何度もチェック覚えましたかと
川岸有佳子
短歌講座作品(5月)2025年
山あいの水田を起こすトラクター水面の景色を乱して進む
春蜥蜴 肌艶やかに出でにけり吾は動かず過ぎ去るを待つ
瀧本泰介
田植え後は米値上がりの時節柄心を込めて手直しをする
名を聞かれ知らんと答えた思い出の紫蘭の花が庭先に咲く
髙橋公美
母らしき事もせぬ身に姪からの珍品届きたぼて頂く
万博に行けぬ老いの身テレビ前時代の先端空飛ぶくるま
小西みや子
トラクターに乗り込みキーを差し込んでシートベルトを探すぽかる日
信号で停車し前を眺めれば横断歩道を渡るは黒ネコ
相口 学
遷宮の社の階段昇り降り手を取りくれる人の温かき
地を覆う色とりどりの芝桜二幕目の春新緑バックに
中村ゐく
調弦し休みの午後に決めしこと聖夜に響け一曲の夢
母の菓子「ここから先は俺がやる」キッチンに起こる小さき革命
千葉由子
とび跳ねる子らを見守る水芭蕉 笑い声聞く水芭蕉と
アマゴ釣る息子を橋の上で見る開いた距離に信頼満ちる
成岡真清
棚の奥子供のころのカードあり目を輝かせて息子が語る
故郷はお肉が有名良かったと帰省の息子ら頬張り笑う
川岸有佳子
亡き叔母が愛でたテッセン藍色に蔦に絡まりひっそりと咲く
山下恵美子
いくつもの節々超えて家族みな笑顔で集うゴールデンウィーク
大櫛登美子
短歌講座作品(4月)2025年
才も無く見目うるわしも情も無その我めとりし夫眠る墓
満開の桜のうぐいす動画にと再生見るが鳥居ずホケキョ
中村ゐく
千鳥ヶ淵も造幣局も花見したテレビの人出に当時をしのぶ
喜々として早朝行ったわらび摘み 今宵はもらった初物を煮る
小西みや子
父百寿みんな集まりうれし泣き続いて欲しい元気な母も
神棚にまつってあった宝くじいろいろ夢見て紙くずとなる
髙橋公美
寒戻り豊作願う例祭にソックス重ね床几に縮む
飛ぶ向きを急転換するクマバチはタンゴ一人で踊るかのよう
瀧本泰介
草ひきの手元に白いスミレあり引かずに数輪押し花にする
川岸有佳子
杉深き緑の中をゆくふたり三椏の黄のこぼれ咲く道
握りたてすぐにほおばる子の笑顔キッチンがまた好きになる夜
千葉由子
待ち焦がれ手にしたブリの重さかな錦漁港の行列並び
誰にでもただ一本の桜の木同じ色にも光にも在らず
成岡真清
三線の音色流れるひとときにデイのみなさんの指先踊る
焙煎の挽きたて豆に湯を注ぐコーヒーの香に歓声上がる
山下恵美子
家中のあちらこちらにキミの跡涙一粒添えて消しゆく
雨音と春の陽光で外を見るよーしバッチリダブルレインボー
相口 学
朝明けについに聞こえし澄んだ声春告鳥は木間に奏でる
大櫛登美子
短歌講座作品(3月)2025年
目黒蓮 好きで好きでたまらんと彼女は青春六十九歳
足痛め我が家の猫が帰宅する足捻ったのと聞けばニャンと鳴く
山下恵美子
先住の暮らし染みこむ空き家には「若い家族」の嬉しいニュース
春の陽の力強さに誘われてイヌフグリの青さらに濃くなる
瀧本泰介
草餅やアラレにいれたヨモギ草母子で探した深野の里に
早咲きの桜の小枝が雪払う春よ来い来いうぐいす来いと
中村ゐく
雨続き散歩を渋る君を引く梅の香漂い引き綱ゆるむ
放課後のあかりもつけず先生が卒業式のピアノ練習
成岡真清
毛鉤巻き今年は釣りに行くんだと目覚める十歳啓蟄の日に
週末の優しくなれるキッチンはつまみ食いさえ罪にならない
千葉由子
この話しようと思ったその先に母はいないとハッと気が付く
「受かったよ」知らせる君はしっかりと親元離れる春を見つめる
川岸有佳子
歯の治療画面に映る我が履歴
三・一二をじっと見つめる
初午に我を忘れて餅拾い気づかず二、三個ヘディングをせり
相口 学
僅かなる賀状の中に当たり番新切手は六角形なり
梅の花いつ咲くのかと待ちわびる菜の花だけを花瓶にさして
大櫛登美子
背丈超え伸びた茶の木を掘り起こす機械の馬力にしばし見とれる
体調を「普通」「普通」に丸をつけデイに持たせて今日はのんびり
小西みやこ
短歌講座作品(2月)2025年
気にもせず歩けた庭のデコボコを障害物と初めて気づく
取り入れた布団持ち上げ右足で形整え見た目よく敷く
ヒヨドリの二匹並んで舞ひ降りて小松菜啄み冬空に消ゆ
瀧本泰介
歌会の教室覗く我八十路、入学の春、ランドセルの児
足元のあしこここにと顔を出す春の息吹のふきのとう摘む
中村ゐく
あなたとは四十年のおつき合い「ありんこ」「コーラス」今度は「短歌」
幼き日祖父に学んだ「心経」を今Xで再び学ぶ
相口 学
近況を知らせる姪の賀状にも「しまい」の文字ありなっとく納得
如月の三峯颪に梅は耐え花芽はつぶらに赤くふくらむ
小西みやこ
枝くわえほころび顔で飛ぶトビに山から白い風吹きつける
記念日にペアの乾杯グラス買う何度割れても都度新しく
立春の園児の笑みに囲まれて「一年生になったら」を吹く
成岡真清
吾の足は上げたつもりがあがらずに僅かな段差に思わず転ぶ
生きてあらば巳年の兄は年男優しき人であったと想う
大櫛登美子
短歌講座作品(1月)2025年
お布団がママと分かれた末っ娘にサンタさんから抱き枕届く
もういくつ寝ると燃えるゴミの日か正月明けて日常を待つ
成岡真清
おだやかな令和七年の三峰山初日を浴びて稜線光る
よき地域に住んだと思う 青森の雪かきする人腰のばしおり
小西みや子
臼囲み餡こ、きな粉に、おろし餅
年に一度の笑顔の集ふ
郵便の配達知らせるバイク音
電動になり挨拶出来ず
瀧本泰介
人生初野郎六人でこしらえたイブのランチに舌鼓打つ
キミの歌これが最後と覚悟した奇跡の復活また詠えるよ
相口 学
箱根路で仲間の姿すぐ先に無念のピストル繰り上げスタート
夏終わり毎朝虫とりをした白菜を味しみしみのすき焼きで頂く
川岸有佳子
店頭に鰻が並ぶ活きたまま寒さが増すと旨味がますと
年越しにつき立て餅を頬張りて子も孫も皆美味い美味いと
山下恵美子
さえざえと今年最後の満月が頭の上をすいすいすいと
冬枝にすがるように垂れさがる飾りにしたいからすうりの実
大櫛登美子
手作りの薫香漂う冬至の日運気上がるよこのベーコ「ん」で
おいちょかぶ一夜で溶けたお年玉情け心をぐっとこらえる
千葉由子
短歌講座作品(12月)2024年
京都にいる母と画面越し「これどう?」と温楽ズボンを一緒に選ぶ
子どもたちに「畑の手伝いありがとう」と手紙のついた干し芋貰う
川岸有佳子
福本の自慢できますかえで道 朝日を浴びていろ映えわたる
つるやにて微微微の支援と思いつつ「がんばろう能登」のかにかまを買う
小西みや子
校庭で帽子、マフラー分け合いて流れ星と昴を仰ぐ
コンビニが温めますかを忘れてもわての豚まんは温めてんか
成岡真清
毎日が紅葉狩りだねお母さん
娘の部屋は秘密の名所
茶筅振り綺麗に泡立て「の」を書いた祖母の言葉を思い出しながら
千葉由子
すりこぎでトロロを伸ばし出汁加えいっぱい食べた家族の夕餉
布団にも部屋にもいっぱい取り込んだ小春日和を今日も愉しむ
瀧本泰介
コロンビア イギリス 日本が開発 に 紅茶片手に国際会議
「アマゴです!移住の決め手になったのは」食味会での一言に嗚呼
相口 学
朝寝した 夫は早くに起きている 味噌汁くらい作ってくれてる?
車窓より下弦の月を仰ぎみる追いかけて走る雲に隠れるまで
山下恵美子
何にしょう頂きもののハヤトウリ柿と一緒にサラダにしょう
吾の好きな花を見せにと子等がいい赤く染まりしコキアの園へ
大櫛登美子
短歌講座作品(11月)2024年
「七笑い」ドレス姿で慰問する「いいないいな」と触れに来られし
彼岸花半月おくれて咲き始め猛暑つづいて時期まで変える
大櫛登美子
秋の陽は老いの部屋まで及びきて曲がりし背なをほっこりつつむ
八十路超え初めてネイルしてもらうごつき指先に爪は輝く
小西みや子
引き出しの奥で見つけたマッチ箱若き時代の思い出めぐる
「これからは自分でやりな」と促され今はやるけど明日は分からぬ
瀧本泰介
学習発表会友と楽しむそのさまは香肌の水を得た魚のよう
マッチングアプリで出会い同棲し入籍するって今の常識?
相口 学
冬鳥のアイドルは君ジョウビタキオレンジボディに銀色の髪
ポイントを貯めても使い方知らず貯めてませんとレジにて告げる
川岸有佳子
安心と当たり前との境目で寂しいよっていつも言えない
全振りのオタ芸輝くバンド横そんな君から目が離せないよ
千葉由子
姉心能登から届く檜葉スプレーおしゃれボトルが存在放つ
冬鳥の鳴き声日に日に増えていくオーケストラの紹介みたいに
成岡真清
初採りの蒟蒻丸めて湯煮をする手前みそなれど出来は上々
色褪せてボロボロになった手提げ籠母の形見は四十年に
山下恵美子
短歌講座作品(10月)2024年
宇宙からの月光あふれ地上では暑さ忘れる十五夜の月
向かい合いこぼれる笑顔のテーブルに約束してた立野の鰻
瀧本泰介
玉すだれ還り来ぬ子の重なりて清楚な白き花をみつめる
人住まぬ家のブタ草風に舞いふわりふわりと我が家に向かう
小西みや子
「病院へ行ってくるわ」と夫出かけ「一人で行けた・・・」とわれは見送る
大櫛登美子
タオル干しの上にちょこんとカエルくん揺らさぬようにそっと干す朝
あかつきにイスに座りてキミを待つ膝に感じた秋の訪れ
相口 学
来春のチューリップはどれにしよカタログ眺め猫に問いかける
朝に夕見廻りする夫猟のため久々かかるはわが家の庭で
成岡真清
おもちゃ持ち「これ買っていい?」と走り寄りママと交渉百均店内
芋虫の奇抜な色に驚いて友に尋ねる「コレ何ていうの?」
川岸有佳子
急ぎ足金木犀が呼び止めるあの日の軒下想い出してと
コーヒーの酸味味わい目を閉じる十歳の彼が座る隣で
千葉由子
短歌講座作品(9月)2024年
粕漬けに青瓜並べ重ね漬け猛暑の午後にキザラは溶けてく
お嫁さんエアコンの網取り外し手早く掃除冷風戻る
山下恵美子
久々に若い世代の和に入り台風つかれのふっ飛ぶ「ランチの会」
野分き去りはびこる畑の草をひきダイコの種を蒔く準備する
小西みや子
米がなきゃ芋を植えればいいじゃないご先祖たちの笑顔つなげて
秋風に草履の鼻緒が不意抜けて裸足で歩く冷えた道路を
成岡真清
夕飯の片付け終わり雨の音テレビもスマホも消して聞き入る
夏盛り藍の生葉の絞り汁手を入れ糸を碧に染めゆく
川岸有佳子
手をつなぎ見上げる空の流星に同じ想いが届く気がした
誕生日息子に贈る弾き語り毎朝指の痛みこらえて
千葉由子
ノロノロと台風十号迷走す気象予報が後出しになる
灼熱の昼下がりには戸を閉めてエアコンかけて息を潜める
大櫛登美子
獅子舞の笛と太鼓の近づくを亡父は新米持て玄関で待つ
惜しいけど使わぬ食器をゴミに出し思い出ひとつまた消えてゆく
瀧本泰介
半世紀を超えてラインで繋がった同級生らの呼び名が出て来ず
かぎ針持ち難しい顔で考える参加者から出た「楽しい」の声
相口 学
短歌講座作品(8月)2024年
むらさきの花を咲かせたサルスベリ ライラックの花に色重なりて
姉達はいつも末子の吾のことを
施設の姉等「今、何してる?」
大櫛登美子
古民家が飲食店に様変わり梅雨あけの日に暖簾のかかる
しゃくり持ち鮎を追いかけ早三年大漁夢みて息子はもぐる
山下恵美子
ひたすらに働き続ける蜜蜂は炎暑の中へも飛び込んでゆく
里山に遺る石垣は開墾に汗を流した思い伝える
瀧本泰介
部活引き小さくなった弁当で土日に通う先は自習室
材料はあるのに出来立て唐揚げを思わず買った夏のスーパー
川岸有佳子
時期遅くやっと伸びた向日葵は夫の草刈りに巻きこまれ消ゆ
成岡真清
年老いたようには見えぬキミの顔秘訣をボクに伝授してくれ
七日盆母への短歌で盛り上がり写真の母とウインク交わす
相口 学
猛暑日に家にこもってテレビ前体操競技の着地を祈る
飯南の最高気温を聞きながら今宵の素麺カラフルに盛る
小西みや子
短歌講座作品(6月)2024年
一ミリの隙間に指を差し入れてボールを上げる次に託して
川岸有佳子
笑顔見て選んだ母の写真にはひ孫がくくったちょん結び見える
ご詠歌の十三番を唱えつつ亡き母偲ぶ石山寺に
相口 学
メダカ飼い初の産卵いつなのか?頭つっこみ水槽覗く
同じ日がアンネと私の誕生日何を書こうか私の日記に
大櫛登美子
身の丈に合ったくらしをと思いつつジャガイモ畑をさぐり掘りする
梅の実の不作の年は紫蘇がいい葉がゆれている水無月の風に
小西みや子
アンカーで距離つめながら駆ける子の悔しい背中に声かけ続ける
黒猫のゴロゴロ音に顔うずめまどろむ朝と昼の間に
成岡真清
手間だけど蕗のアク出し皮むいてじゃが芋と煮る亡き母真似て
巣の外に翼はみ出て賑やかに燕兄弟明日は飛び立つ
山下恵美子
答弁で真面目な人は困ってる「真摯」を使うと嘘に聞こえる
ルピナスも盛りを過ぎれば玄関を任せられずに裏庭に引っ込む
瀧本泰介
短歌講座作品(5月)2024年
荒玉の年度変わりの風過ぎて目に留まりし花「ヒトリシズカ」
首切るぞ娘に脅されテル坊主遠足の日だけ見事な晴れに
成岡真清
一日は長く一年は早いと言う年寄りの暮らし 山は青葉に
おばさんにおばさんと呼ばれ「誰のこと?」あたり見まわしたと姪は苦笑い
小西みや子
今日もまたパジャマの袖に固い物焼きそばだったり米粒だったり
お互いに声掛けあって茶刈りする農夫の頬を薫風撫でる
瀧本泰介
温くなりて畑に種蒔きあれこれと春の雨降り発芽を夢見る
食べられる染められる物と分けながら草引きをする春晴れの日に
川岸有佳子
軽やかに手作り毛鉤を一つだけ瀬音を耳に魚とたわむる
タンデムで走ればあなたと背が並ぶ同じ景色を同じ目線で
千葉由子
近隣のコーヒーの香りわが好み友が友呼びコーヒー喫茶に
花筵友と二人で感動しそろそろ歩く雪道のごとく
大櫛登美子
足もとはおぼつかないが今日を過ごす高齢夫婦は施設を拒む
母の日の花もいいけどホタテにした娘の計らい夫といただく
山下恵美子
短歌講座作品(4月)2024年
卒業を最後に忘れた友の顔淡い記憶の春風届く
岩崎有菜
粥見まで足を延ばして沿道の満開のさくら車窓まどより眺む
ささやかな一日一善溝のごみ如何になったか雨後見んに行く
小西みや子
妖精が儚はかない花火開かせる霧降る庭に春の訪れ
三椏みつまたの三枝分かれ咲く花は三人の道灯すかのように
千葉由子
憧れた朝あさ活かつチャンス到来す六時のバスで子を送り出す
わが町の春待ち開いた桜木を一本残らず褒めてやりたい
成岡真清
印鑑を持ったと何度もチェックして現地で気づく通帳ないと
スーツ着て音符カフスにピンクタイ 式に赴く足は軽やか
相口 学
春彼岸三峰の山に雪つもる「暑さ寒さ・・・」も死語になりつつ
葉ぼたんが茎立ちしても百花無くいつものようにいかないようだ
大櫛登美子
奉幣の祭り整ふ境内の水屋の杜に春雨凍こごゆ
餅まきを待つ子の思い大人らの萎しぼむ元気にハッパをかける
瀧本泰介
週イチのビーチボールバレー待ち遠しい打って拾って繋げる笑顔
仕事終わり息子が撮った水戸駅の桜の写真を待ち受けにする
川岸有佳子
さくら咲くブレザースーツで入学式中一男子はカッコ良すぎる
山下恵美子
短歌講座作品(3月)2024年
おひなさまに夢を託して飾りしも年を重ねて省略したし
井戸元と云われし谷に芹しげり手をさし入れば水ぬくきこと
大櫛登美子
大阪の義母が次来る日の為にパジャマを買って引き出しに置く
川岸有佳子
八十路越えからだ不調のはなし合う「一緒一緒」と笑いも入る
うぐいすの鳴き声聞けど雪が舞う弥生の畑に馬鈴薯植える
小西みや子
四星球初めて覚えた中国語ピンポン球に印を付けた
姉叫ぶ「オラに元気をわけてくれ」十年ぶりに実家へ走る
成岡真清
外皮を剥けば顔出す目の覚める真白き分葱に話の弾む
春の陽を部屋いっぱいに貯め込んで母は針持ちコクリとしをり
瀧本泰介
教え子と写りし互いの髪色は永遠の銀と束の間の金
卒業の寄稿文に短歌載す講座の学びを発揮しており
相口 学
水仙が空き家の庭に白く咲く二輪手折りて花泥棒
卒業式羽織袴で行く孫にわれの心配着崩れせぬかと
山下恵美子
庭先で聞こえてくるのはぐぜり鳴き春入学の娘重ねて
千葉由子
短歌講座作品(2月)2024年
新しい暮らしを始めた母の元梅酒を添えて野菜を送る
沢山の用事を済ました帰り道後ろの席からマクドの香り
川岸有佳子
スマホデビュー苦戦している父親へおざなりしているメールを返す
人魚姫なりたい時期もあったなと風呂で跳ね飛ぶ娘と泡沫
岩崎有菜
大根を畑そのまま抜かずでも猿に片付け頼んじゃおらぬ
春待ちのキャベツ日に日に育ってたカモシカ害獣登場までは
成岡真清
別名は「星の瞳」のイヌフグリ日に日に繁茂手強い草に
手の平に窪みを作って豆載せるこぼれるほどに生かされており
大櫛登美子
初庚申四年に一度の供養祭お供え持ち寄る福本の里
僅かの間勤めし事ある老いの身に声かけてくれし人のうれしき
小西みや子
恵方巻黙って食べろと言うけれど食べ切るまでにむせ込んでくる
黒糖のぶつぶつ残るだら焼きを『半分こ』した少年時代
瀧本泰介
珈琲をあなたと一緒に楽しんだ思い出そっと棺に手向けり
テレビ塔階段使うと宣言しリタイアだめよと釘を刺される
相口 学
短歌講座作品(1月)2024年
刈り込まず残しておいた山茶花は重なり合って紅く装う
餅つきをまかせて二年嫁と孫に手際よくなりわれは見守る
大櫛登美子
はちみつのジュワリと染みたパンを買う口に広がる甘い幸せ
洗濯の脱水を待つ五分間凍える指で携帯にメモ
川岸有佳子
温かき布団のあるをよしとして被災地思い多くを望まず
突風は枯葉を連れて土間に入る「あゝあゝ」いいつつ急ぎ戸を閉む
小西みや子
バドジズデジドダ茶の間に流れ来て意味分らんけどウキウキ気分
終わったら一杯やろかと声掛かり薪ストーブ前に珈琲三つ
相口 学
ピピ音が聞こえず妻に指摘され体温計をまた挟んでみる
孫たちは年越し蕎麦の『お代わり!』に『楽しいよね!』とひと言くれる
瀧本泰介
年明けの河原でどんど火響き渡るTVを消して集う人々
娘笑むだるま印の入浴剤入試前夜に開けると決めて
成岡真清
短歌講座作品(11月)2023年
足早に過ぎる旬モノ友人へ遠き場所でも繋がる食卓
感動は滅多にしない私だが見上げる夜空は誰かと居たい
岩崎有菜
唐谷で鴨十三羽ひと休み「二羽ずつ食える」娘の算用
嗅ぐためにもらったカリンが箱いっぱいおすそ分けしたいあの人浮かぶ
成岡真清
寒空に太く大きな虹かかる出勤途中の子らも見てるか
メダカ飼い「子供生まれた」と子にライン「学級一つ増えたね」と返る
大櫛登美子
亡き父が好きだと言ったマリーゴールド花どきに摘み白シャツ染める
「お待たせ」と会社の制服着た息子駅舎の灯りがほほ笑み照らす
川岸有佳子
泣き叫ぶガザの親子の画面観て何も出来ない日本もどかし
柿の実の「熟柿」分け合う父母の野良の合間の会話の浮かぶ
瀧本泰介
「愛の花」歌う衣装はこれしかない絞りのベストに音符のカフス
ステージで元気に演技する子らに僻地を照らす輝きを見る
相口 学
タケウチの店主の選ぶチェック柄晩秋色着てみかん狩りゆく
大相撲四時ともなればテレビ前最年長の玉鷲贔屓
小西みや子
短歌講座作品(7月)2023年
猛暑日に一尾ならばとうなぎ買い「うまい!うまい!」で暑さ吹き飛ぶ
初めての田んぼ手伝い除草作業田車押して成長願う
川岸有佳子
すり鉢の底のような地我が里も半夏生の日の入り六時十分
夏木立こもれ日のさす林道を草満載の軽トラが行く
小西みや子
「始めよか」腰を上げてはまた下ろし休憩延ばす今日の猛暑日
猿害にくじけず今朝も授粉するカボチャコロッケ待つ子らのいる
瀧本泰介
五十輪のヒノキを倒し皮を剥ぐ十一歳の林業体験
織姫より蠍の似合う女もいる毒まきちらし夜毎ほほえむ
成岡真清
ほんのりと新茶が匂う台所母を偲んでお茶を頂く
誕生日子らに誘われ「かざはや」へ里は一面白きアナベル
大櫛登美子
ハゼユリはずっとしずかに待っていた優しい心と花開く朝を
楽しみは家族とともに散歩して自然の声に耳澄ます時
千葉由子
寿生「子らとの交流楽しみで通院止めた」と笑顔で語る
えっマジか!蜘蛛はシンクを登れない!ピューって行くのは映画の世界
相口 学
炎天下交通整理のガードマンの白旗合図に会釈で通る
夏祭り浴衣姿で賑わいの志摩の夜空に花火があがる
山下恵美子
短歌講座作品(6月)2023年
木場公園白くて清楚な花が咲く「あれ!何という?」「なんじゃもんじゃ」と
種を蒔き育てた枇杷は十余年初の実をつけ小粒で甘し
大櫛登美子
梅の実を選別しつつ思うなり十粒十色人間とおんなじ
顔だけが若いと言われながらにも「もろてん もろてん」と花柄マスク
小西みや子
床に伏しどくだみ梅の実待ったなし「元気一番」悔し泣きする
あの庭もここも紫陽花見事なり我が庭だけが季節遅れか
成岡真清
たわむ枝桃の実付けていじらしい熟す姿は頬染めるよう
箱罠にたぬきじゃなくてねこかかりむすめが「にくだ!」慌てて逃がす
岩崎有菜
待合の焼き肉番組横に見て呼ばれるを待つ内視鏡室
看護師の「胃が空っぽですから」のひと言で焼き肉止めてお粥を頼む
瀧本泰介
笹百合に逢いたくて今日訪ね行く岩肌に咲く薄桃のきみ
山下恵美子
二十五年ぶり藤沢駅で待ち合わせ振り向いた友変わらぬ笑顔
手を取りて「元気だった?」の問いかけに「元気だったよ」と涙こらえる
川岸有佳子
アカペラで「カロ・ミオ・ベン」を歌いたる高三のキミ青春の声
山奥の一面の花に鹿遊ぶ桃源郷に我は身を置く
相口 学
雨の日に蝶は飛べない空の下紫陽花にみる花びらの蝶
黄緑の光探して雨上がりほろ酔い夜道ふたりの世界
千葉由子
短歌講座作品(5月)2023年
十年越し今年も芽が出てこんにちは じいちゃん残したにんじんの種
母の日に娘がくれたいもバター パンにたっぷり塗って頂く
川岸有佳子
「若いなあ」お世辞と思えど気がほぐれ八十の背をおもいきり伸ばす
さつき咲く第二日曜佳き日なりチルド便届くマグロの短冊
小西みや子
みどり色二千種類もあると云う新緑ながめ深呼吸する
タケノコの炊き込み御飯息子らも孫も喜び持ち帰りにも
大櫛登美子
閉じ込めた氷砂糖と梅見つめ逸る心で揺らし続ける
熟すまで気づかずいちご踏んづけたしゃがめば溢れる真っ赤ないちご
岩崎有菜
梅の実が三つ並んであらミッキー娘仲間と今夢の国
麦秋の眺め体感柔らげるつるりひんやり伊勢うどんよし
成岡真清
彩雲が田んぼのふたりを見守った遠くの友と再会した子
さあ行こう息子が差し出す手をとって一輪車ふたつ進み始める
千葉由子
定演のワンステ企画に参加して歌って創るハモりに酔わん
大根が板前舎弟に桂むきされて乙女の如き肌に変身
相口 学
幾年も納屋で眠りし漆の茶碗木箱共々見知らぬ土地へ
幼子が茶の実集めておままごとどうぞと差し出す赤いお茶碗
山下恵美子
年長に倣って続く「おいしい!」に笑いの弾む家族の夕餉
新緑の風を背に受け自転車は挨拶交わして麦の穂揺らす
瀧本泰介
短歌講座作品(4月)2023年
風なくも揺れるブランコわびしくて帰らぬ日々に今を夢見る
岩崎有菜
ワラビ有り秘密の場所じゃないけれど教えてあげるやさしさまだない
ケロチュピピ命かしまし田んぼ道 なにより好きは水路の唄ヨ
成岡真清
野の花の盛りを待ってミツバチに残せし菜畑に夏野菜植う
桜花散り積む道に真っ直ぐの二本の轍牛乳屋の残す
瀧本泰介
「ママ!見てよ」手には輝く甲虫が驚かないでねお名前の意味
子が歩く緩いカーブは「つ」の形ツツジとツバメと通学の道
千葉由子
バス旅行三年振りに参宮すおはらい町で至福のひととき
例年より早く採れたる筍とタラの芽行き交う福本の里
小西みや子
大阪の義母がカバンを差し出して「染めてもらえる?草木の色に」と
「雲ヶ瀬」の新緑の径 シジュウカラのさえずり耳にゆっくりと行く
川岸有佳子
正月の葉牡丹の茎伸びるころ野山も里も百花繚乱
春休みマスク外して花見してボール弾けて笑顔はじけて
大櫛登美子
タマを呼ぶ「さしみ食べよかはよおいで」どこに居るやら枯草ゆれて
父母が眠る丘まで会いに行く草餅まつり姉弟二人で
山下恵美子
例祭に神が届けし桜舞駐めたクルマをピンクのコイに
引継ぎの古びた缶に書かれたる五文字の中に父を見つけり
相口 学
短歌講座作品(3月)2023年
しんしんと如月の朝雪積もり雪の明かりで新聞を読む
ひなまつり八十路の夫がふり向いて「たこ焼きよりもケーキにしよか」
大櫛登美子
短歌会のあと気分華やぎ買い物へ赤いパプリカ手に取ってみる
先生の「ひと文字加えてみたらどう」で短歌にわかに生き生きとする
川岸有佳子
川底に春の日差しの広まって水の温むか川鵜の潜る
古稀過ぎてバランス崩す事多く自問しながら階段降りる
瀧本泰介
春なかばモンシロチョウのダンス見る数千年の強さと感謝
千葉由子
砂利道に桃色まざり気づく春顔も綻ぶ待ちわびた花
山々の恵みが目覚め爛爛と摘まれたよもぎ香しいかな
岩崎有菜
制服着て「多幸良」の丘を巣立つ朝六年ここで大きくなれた
南風まとわりついてじゃれついて君がはしゃいで私のすり傷
成岡真清
少しずつ日は延びていく午後五時に馬鈴薯植えし畑に陽は残る
旬の味わけぎの酢味噌初物を「うまいねえ」と夫の声聞く
小西みや子
十年前たった一回授業した子等と再会スタバして春
朝ドラに短歌の彼が登場し俵万智まで二首詠みて受け
相口 学
短歌講座作品(2月)2023年
頂いたみかんで作るジャムの瓶に今日の思い出ギュッと詰め込む
春寒に「出るんやろか」と言いながら夫と二人でこま菌を打つ
川岸有佳子
後ろ手に前かがみしてきさらぎの道行く媼に雪花の散る
コロコロ漬友に教わりサイノ目に切った大根二月の陽に干す
小西みや子
四色の中のパインを溶かし合うあなたとだけの秘密の食べ方
あの角に明るい金色菜の花よ春のお支度蜂の靴下
千葉由子
大雪に若き知人がたずね来て静かな我家に元気が届く
チョコの前あげる人なくスルーして義理チョコでもと後戻りする
大櫛登美子
移住して初の積雪胸踊り童心無常今ではこたつ
サッカーで疲れた息子寝床行き母の尻蹴り夢の初シュート
岩崎有菜
乗りたてのチャリで暴走末娘自由の翼ちぎれんばかり
続々と新入生らたどり着き香肌あちこちざわめき時代
成岡真清
雨もらい柔らかくなる陽の光土の中にも虫の蠢く
吐く息の白さを比べバスを待つ子等のはしゃぎに引き込まれてる
瀧本泰介
中一で初めて貰ったガーナチョコ シラーの言葉が添えられており
いつもなら音楽かけて運転も今日はオフにし一首捻らん
相口
学
短歌講座作品(1月)2023年
朝出かけに「帰りは七時のバスに乗る」高一の息子は始発で登校
皆のあと最後に入るぬるい風呂湯舟につかり深く息つく
川岸有佳子
山里に猿追う花火の音聞こゆ空家のみかん狙っているらし
セルフにてはじめてガソリンひとり入れハンドル軽く家路をいそぐ
小西みや子
子等送り舟漕ぐ妻の横顔に声を掛けずにそのままにおく
コロナ禍も従兄姉と遊んだ三が日言葉増やして二歳児帰る
瀧本泰介
去年の冬は足元ぬくぬくだったのに今年は何だかつれないねキミ
新年に新メンバーが加わって短歌講座に新風が吹く
相口 学
冬至には柚子五個いれて入る夫体温め湯治とシャレる
黒電話「使ってみたら」と孫に云う「どう使うの?」に我はあわてる
大櫛登美子
冷凍のドリアを食べれば思い出す母と過ごした遠い冬の日
薪風呂で赤々茹る全身を夜風で冷まし暖炉に戻る
岩崎有菜
広大な言葉の海で立ち泳ぎ三十一文字の救助ボート
丸い皮円満包む餃子会具材内訳幸福至極
成岡真清
影に触れ暗く冷たく思う時後ろにあるよ優しい光
千葉由子
短歌講座作品(12月)2022年
令和の世刈る人もなくかや草を師走の風は枯穂なでゆく
品質の改良されし「はるみ」という甘きみかんをいとしみて収穫
「何てなあ」聞き返す事多くなる昭和一桁夫婦の会話
小西みや子
あれこれと指示されることの多くなり「はよ寝てんか!」でうたた寝覚める
気の置けぬ仲間と交わす年賀状「もう止めよう」とすんなり決まる
家に居てやりたいことの数多くまとまること無く一日過ぎる
初めてのバイト愉しむ妻送り小春を浴びて羊羹つまむ
瀧本泰介
娘いる奈良まで出掛けランチするお肉ほおばり家族にナイショ
干し柿をサルに盗られてなるまいと昼間は柵内夜は室内
豆を挽く楽しみできて卒業す二十年来のインスタントコーヒー
川岸有佳子
青空に竿さし出して柿をとるいくつとれるかいつまでとれるか
心友は花も団子も好きという紅葉狩りして帰りは団子
大櫛登美子
ライン上一ミリONを写し出すVARのありがたきかな
其処此処で「短歌見てるよ」の声を聞きそれをお題にできる喜び
「村神様」 も少し待てば「ブラボー」かやっぱり明るい話題がいいね
相口 学
腰を曲げ「落穂拾い」の絵の如くロングスカートで草むしる人
八十八免許更新通ったとコーヒー片手に安堵の顔で
光る海頬撫でる風心地よく沖行く船はさざ波立てて
山下恵美子
短歌講座作品(11月)2022年
手ごこしく花の手入れをする友の秋明菊は徐々に増えゆく
友さそいコミュニティバスに試乗してもみじ見頃の波瀬峡をゆく
里芋を掘り片づけも出来ぬ間につるべ落しの日は沈みゆく
小西みや子
ボックスで重たい受話器上げかける公衆電話は昔を思う
夏終わりひとりばえしたジャガイモがほったらかしても沢山実る
末の子が幼き頃に植えた種十年たってやっとみかん生る
川岸有佳子
月蝕を夫と一緒に見上げをり次に見るのは322年後
竹やぶの枯れた小枝をとまり木に落穂みつけてさえずる雀
文化の日すんだ夜空に十日月 今日は玉葱百本植える
大櫛登美子
比較する猿にやられし栗の木と実らぬ柿の木どっちもいやじゃ
電車旅スマホ一つで事足りて現金持たずを気づかずに居り
教え子が教え子呼んで講演会新聞記事見て笑みがこぼれる
相口 学
親しんだタオルがある日「ぞうきん」と書かれて軒に吊るされてをり
青春の炎の残り火なほ熱く七十路なるも同窓集ふ
会へぬまま帰って来ない母もいる施設の姉は如何におはすか
瀧本泰介
国道で出会った人はリュック負い北海道から大和路を行く
山葡萄フェンスに蔦を絡めつつ緑が青にやがて紫に
山下恵美子
短歌講座作品(8月)
谷間より朝霧上る光景は墨絵の如き窓より眺む
ふる里を離れた姪等の寄り所とならんと叔母は夏野菜作る
年毎に手先のこわばりきつくなり目覚め一番指折りてみる
小西みや子
夜半すぎ薄明かりの炊事場でウマオイの声聞きてまどろむ
川岸有佳子
食卓に一粒残るサクランボ「あんたが食べな」と夫は目で云う
父母が心を込めた米作り休耕田が年ごと増える
今年こそ賑わうはずの盆休みコロナ七波でまたも遠のく
大櫛登美子
宅配のアイスクリームといっしょに「食べたい気持ち」も冷凍にする
アサガオの蔓這う縁台に足の伸び娘二人はスイカ頬張る
障子戸にカサッと嫌な音のするそっと構えどデカグモだった
瀧本泰介
一昨年は柿持って行き去年栗まさか今年は両方持ちサル?
初盆に聞く涙ながらの山話には私の知らぬ父がまだ居り
「また来てな」送り火囲み空仰ぐ遠くで聞こえるヒグラシの声
相口 学
短歌講座作品(7月)
ほととぎすは「特 許 許 可 局」と鳴くという物干場にて耳すませ聞く
クーラーをつけているかと電話あり昭和一桁終の住み家に
「旨いなあ」四人で作る旬の味でんがら試食二個目手にとる
小西みや子
亡き友に心の区切りがつかぬまま短歌のことを今も話さん
玄関に何度活けても紫陽花は長引く雨をさわやかにして
バラの花一本折ってくれた友挿し木の芽からつぼみがひとつ
大櫛登美子
朝夕に糠床混ぜた右手にはほんのり糠の匂いが残る
梅ジュース赤シソ少しもみ込めば色鮮やかに風味も増して
梅を干す時期が分からず瓶揺する三日三晩の晴天を待つ
川岸有佳子
エリザベスカラー響きはいいけどそれつけたキミの姿は辛そうに見え
ワクチンを三回打ってもなおかかる 5の恐ろしきかな
再開し一緒に歌った亡き友に黙祷捧ぐ土曜日の朝
相口 学
一日の汗にまみれて塩辛いシャツをつまんで揉み洗いする
飯高の空を自在に滑り来る今日のクマタカ朝陽に映える
瀧本泰介
色あせて青き花瓶でもう七日香り忘れぬ梔子の花
カヌー漕ぐ浅瀬の川で初体験こわごわの顔夏休みの孫
瓦屋根登って狙う鳥の群れ猫は動かず狙い定めて
山下恵美子
短歌講座作品6月(2022)
久し振りコーヒータイムはパン屋さん十人揃ってマスクの談笑
八キロの梅漬け終えて座りこむ瓶を眺めてあげる子等思う
間違えて畑に植えしカサブランカ適度の肥に白くっきりと
小西みや子
およちゃんと初めて伴い歩けども右手と左手一緒に動く
東京で十年振りに逢いし友銀の鈴にて際立ち見える
墓前にて兄姉並んで写真撮る亡父に報告元気ですよと
川岸有佳子
食事どき決まって流れるニュース見る談笑なくすロシアの侵攻
ハンドル手に高見峠にさしかかる崖がけガケに卯の花さきて
八十路にも山の手入れが夫の日々にぎわう声に友が友よぶ
大櫛登美子
そら豆のお粥かきこむそれだけでリッチな気分五月の盛り
聞くのも嫌な戦争の「大本営発表」を年中聞いてた時代もあった
瀧本泰介
短歌講座作品5月(2022)
何となく気の晴れぬものを自問して見つけし答へは戦禍のこども
何気なくお悔やみ欄に眼をやれば短歌仲間の名前に出会う
湯に通し剥いて晒して煮たフキの香りも詰めて子どもら帰る
それ隠せ!ナイフ鉛筆飴ちゃんも忘れちゃいけないお酒の瓶も
瀧本泰介
クーポンを利用も出来ず初夏向きの旅行の広告に若き日しのぶ
母の日に姪から届くプレゼント薔薇の形の菓子はチルド便
軽トラの連なり通る一六六を派手な車の行き交う五月
小西みや子
「お名前は?」「メイ」と答える幼児は赤いサンダル片足上げて
ぎこちなくラジオ体操する夫と我も足元フラツキ多く
近頃は夫とでかけた記憶なく今日のおでかけワクチン接種
山下恵美子
草取りの合間に見付けた紫蘇の芽を引かないように棒立てておく
ブロッコリーそろそろ引こかと茎持つと蛹を見つけ少し待つとする
遠くまで通う息子の弁当にお数もご飯もモリモリ詰める
川岸有佳子
階段を降りつつチラッと振り返る君の仕草に思わず「キュンです」
「母の日も仏間の母は凛々しくて」あなたの一句にあなたが重なり
相口 学
出来るだけ 暮れの掃除もぼちぼちと「寒くないか」と夫の声する
山口克代
歌仲間の、山口克代様が先月お亡くなりになりました。ご冥福をお祈り申し上げます。
コロナ禍の中、作品を出していただき、心和ませて頂きました。上の短歌は、
令和二年十二月に発表されたものです。私も、将来こんな歌を詠みたいと思います。 山本記す
短歌講座作品2月(2022)
仙台からはるばるやって来た孫は昭和のおせちを笑顔で食べる
「来年から賀状欠礼」の葉書あり老いるというは寂しき事なり
おりおりの年寄衆の歩きし道庚申さんまで今年も歩こう
小西みや子
松阪の飲み水養う台高の森林を崩して風力要るや
森林壊れ山脈荒れし故郷を君は胸張り孫子に繋ぐか
出社するパパの真似してかばん持ち靴はく孫はもうすぐ二歳
駅伝の好きな孫らに席譲りテレビ離れて作業服着る
瀧本泰介
二十歳の顔マスク有りでも「ああ!」となり無しでも「えっと?」となる子らが居り
厳寒の歳旦祭で拝礼すもうすぐそこに遷宮の春
「えんやらやー」大山之神の御前で唱える声に力がこもる
相口 学
つきたてはヤッパり違うと餅三個醤油だけつけ平らげる孫
亡き父母が暮れに作りし蒟蒻をこの歳になり私も作る
鴨数羽ゆるい流れの川上る何かの気配で一斉に飛ぶ
山下恵美子
ぺたぺたでよれよれのタオルボロに出しお正月に出すふっくらタオル
長男が野菜たっぷりラーメンを作ってくれた正月三日目
晴れ着きて成人式の写真撮る幼き頃の笑顔のままで
川岸有佳子
近隣に昔懐かしポポーの木幼き頃がいっきに戻る
げんかんを出て見上げる西の空満月輝くげんかんの朝
コロナ禍に息子一家と奈良で会い一時の間に無事を確認
大櫛登美子
短歌講座作品9月(2021)
朝顔の蔓這ふ縁台に足伸ばし娘二人はスイカ頬張る
仏間からお仏供を口に走り出す孫追ふ声に苦笑の混じる
散歩待つ手のひらサイズの孫の靴大人の横で三和土に並ぶ
瀧本泰介
畑すみの根のはびこりし十薬を先の尖った手鍬で退治す
新しい生活様式身について初盆参りもマスクの会話
クエン酸入れし青じそ鴇色にさわやかジュース友にふるまう
小西みや子
ゴスペルを心の底から歌い上げ満面笑みのあなたを憶う
「あったー」とわくわくしながらガチャ回す我をかわいく思う我あり
夏祭りコロナでなくても中止ですスカッと晴れた空は何処に
相口 学
短歌講座作品8月(2021)
二回目のワクチン接種を前にして食材買ひ足し有事に備ふ
挨拶のなかった高校生は今はにかんで「おはようございます」とバスに乗り込む
銀色の日よけを背中に稗を抜く男女二人に日射し緩まず
瀧本泰介
雨垂れが四拍子のリズム打つコールタールの空き缶の上
背を丸め母はゆっくり餡を炊く初夏の厨に思いで香る
炊飯の湯気が網戸をくぐり抜け梅雨の空へと上りてゆきぬ
水谷友子
つゆ晴れ間強き日射しを背に受けて小豆を蒔きし畑に茅草敷く
釣り難き櫛田の川の若鮎を今宵は塩焼きその香ただよう
気がかりな認知検査を無事終えて家路にいそぐ足も軽やか
小西みや子
種を蒔き育てた枇杷が十年に初の実をつけ小粒で甘し
ワクチンを二回済んだとラインする「気を引き締めて」と子等の返信
家の嫁七夕の日が誕生日実母の思い短冊に引き継ぐ
大櫛登美子
「どんだけでも持ってきな」と主言うビワの葉頂きストールを染める
父さんはマリーゴールド好きだった「空から見てな沢山咲いたよ」
川岸有佳子
三十年前子らの歓声こだました月出の里に一人佇む
「飯高るた」小学生と勝負する寿生のはじける笑顔
寿大学でずっと一緒に学び来た君の姿の見えぬ寂しさ
相口 学
友人は食べた食べたと大喜び長野まで行きサクランボ100個
薄れゆく記憶の中の母なれど息子に会えばクシャクシャの顔
山下恵美子
短歌講座作品7月(2021)
山里の古き家屋の厨にも初夏の風入れ馬鈴薯を煮る
雑草をひき木陰に入りて汗ぬぐい黒揚羽蝶の蜜吸うを見る
紫陽花のいろ濃く染めし早朝の雨苗木をくれた人は早や逝き
小西みや子
梅雨晴れ間草引きをして紫蘇の芽を見つけてそっと枯草を敷く
草影に赤いカエルが出現し何のお告げか対峙して聞く
夕飯の片付けすませ夫と二人「プレバト」を観る木曜の夜
川岸有佳子
大阪で教育実習に通う女孫緊急事態宣言の中を
誕生日息子にドライブ誘われてかざはやの里にあじさいを見る
梅雨時に夏日を受けてささゆりはこの温度差に耐えて咲きおり
大櫛登美子
あじさいがしとしと雨に打たれつつ明日の日差しを待つ日暮道に
鳥の声緑豊かなこの幸も見えない怖さに思いをよせる
梅雨晴れ間に野良猫集い茶畑に何の相談しているのかな
山口克代
実食いとサヤ食いエンドウ区別つかず収穫しては夫に叱られる
咲き誇るバラのアーチをくぐり抜け香りにつつまれ雨の道行く
坂道を登りきればそこは図書館笹ユリはまだ蕾のままで
山下恵美子
山からの冷気のシャワーを浴びながら数分間の草取りをする
「自分の名きちんと書いたことないなあ」ペン講座でのつぶやきひとつ
正装し仮殿遷座の儀に臨みいにしえ人に思いを馳せる
相口 学
去年も来し渓の民家の庭先は夏草繁り葛蔓伸ぶ
朴の葉を洗ふ婆ばの笑顔をも「でんがら餅」に包み込みたし
瀧本泰介
短歌講座作品6月(2021)
行くとこも来る人もなき連休に八十路の足引き蕗摘みをする
雨の午後よもぎ求肥に挑戦す甘さおさえた私流「旨っ」
吾が歩く庚申堂への道のりに車通らず人にも会わず
小西みや子
大型の茶刈り機走るを脇に見て古稀の四人で新茶刈り取る
草刈りの土手で出会った野アザミと再会約してそのままに置く
筍の根元を鍬で探り当て梃子の原理で「えいっ」と掘り出す
瀧本泰介
花好きの私にそっとバラ一輪「持っていきな」と幼なじみは
ふるさとを離れて生きた兄の手に最後のときと金柑わたす
いたどりをゴソゴソ探し見つけてはポキンポキンと音たてて折る
大櫛登美子
九輪草溢れ日揺れてキラキラと色美しく連休に咲く
母の日に贈られし花見つめつつ遠い日のことわが母のこと
実えんどうきれいに並んでさやの中眺めていたい愛くるしくて
山口克代
好き嫌い多くて困る小四男子かまずに飲みこむネギのぬたあえ
待合室検査結果の時間待ちペットボトルの茶はのどを通らず
山下恵美子
畦草を刈りつつ進む刃の先に小さき花の群生を見る
こいのぼり親子の鯉は姿消し今目にするは群れ泳ぐ鯉
健康で休まずできるを願いつつ寿大学今年も始まる
相口 学
春の日のよもぎの香りに包まれてストール染める公民館講座
サクサクのカレーパンが食べたくて昔なじみのパン屋へ向かう
川岸有佳子
短歌講座作品5月(2021)
冬の間に株わけをしたホシギキョウこんもり茂り初夏の風待つ
懸賞で当たった紫大根をたくさん蒔いて育つを楽しむ
川岸有佳子
春うらら桜満開波瀬の里かつえ坂峠もふたりで越える
若き等と会えると思うその矢先中止となりてコロナはにくし
タラの芽とわらび行き交う里の春夕餉の皿に初物を盛る
小西みや子
ねずみ講の図を逆さまにしたようなミツマタどこまでいっても三俣
レントゲン「動かないで」と言われれば耳の痒みがますます気になる
「ホトケノザ」「オオイヌノフグリ」「オドリコソウ」芋植えるため抜き取ってゆく
水谷友子
医者帰りしばし桜をながめると鶯までもむかえてくれる
山桜 吉野桜に八重桜黄砂も飛んで重なる「かすみ」
櫛田川にもえぎ色した欅の芽「若葉」の歌がついこぼれ出る
大櫛登美子
くつ下がゆらゆら揺れるすぐそばでタンポポの綿毛今飛び立たん
エコバッグ忘れし時の「しまった!」は携帯忘れし時より勝る
相口 学
参道の桜の花に誘われて拝する我に神風の吹く
山裾に朝霧掛かり帯となり白さを増して花をも染める
衣替え出したり入れたり着てみたり夜ともなれば冬物を着る
山口克代
むせ込んで背中さすられ笑われて仕上げはくしゃみでやっと治まる
雨上がり今年も来た来たクマンバチくるっと向き変え羽音の迫る
軒下の甕に満ちたる春の雨 風に打たれて水面の乱る
瀧本泰介
四十に手の届く娘の振り袖を思案しながら樟脳替える
花柄の赤い前掛可愛くてお地蔵様は鎮座している
ルピナスの色とりどりに咲きそろう主亡きとて咲かす人のいて
山下恵美子
短歌講座作品4月(2021)
早朝に新聞取りに外に出れば墨絵のような朝霧を見る
記念日に夫が植えたヒマラヤ杉天に向って大きく育つ
大櫛登美子
「飯高のディーン・フジオカですってね」県外からのメールが届く
オープン戦ご当地選手の名が並び開幕しても同じでと願う
小学校で証書渡した児童らがもう中高の学び舎を去り
相口 学
和菓子講座で習ったばかりを伝授する求肥を前に皆わらい顔
山里の唯一社交の初午祭ごくまきもなくさびしく暮れる
「こんなとこ知らんだなあ」と大石不動の高い石段ふたりで登る
小西みや子
君は逝く若くして逝くもうゐない 我はその頃孫と戯る
暗闇の仏間のスイッチ探り当ていつも通りにお仏供を祀る
春うらら電話の向かふに鶏の声移住の二人に家族の増える
瀧本泰介
テレビよりのサプリメントの通販に効くんかいなと呟いてみる
不細工な爪にマニキュアほどこせば厚塗りしても映えぬピンク色
雨の午後父が爪弾くギターの音息子が歌うテンポよろしく
山下恵美子
木蓮が日ごと頭を持ちあげて今朝は真白にやさしく開く
手のひらを太陽にあて五分間一日数回骨を養う
そこまでと出かけてみればどこもかもコロナ居座り春まだ遠く
山口克代
短歌講座作品2月(2021)
紅梅はいつもの年と変わりなく蕾膨らむわが家の庭で
「おばちゃんって昔からずーっと変わらんなー」新年早々若くみられる
大櫛登美子
幸せも中の下かなと思いつつ福本宮の石段登る
過疎の初春「ちょっと参ってくるわ」とシルバーマークの軽トラは行く
待ち合わせの時間の間に美術館へ八十路にて知る絵画の魅力
小西みや子
年の瀬は妻の指図をそのままに取り粉まぶして「鏡」整ふ
期待した帰省叶わぬ娘らにチルドで送る田作りの味
餅米の旨さを知った孫の眼は熱さを忘れ蒸し器に移る
百歳の手になる賀状を記念にと思えど待てよ来年もある
瀧本泰介
「もう少しオシャレをしろ」と弟に合う服選ぶ二十歳の兄ちゃん
6つ上の兄が選んだGジャンを恥ずかしそうに羽織る弟
正月に家族の数だけ延びているコンセントからスマホの充電
川岸有佳子
「春からは大学生」と娘さんレジ打つ指も笑顔も弾んで
「母さん」と呼ぶ声がして振り向けば息子の「母さん」今はお嫁さん
帰り際「田舎やけどコロナには気をつけてな」と孫は手をふる
山下恵美子
冬の夜私の足元温める湯たんぽの如きキミは最高
送られし新成人の写真見て目元で名前を考えてみる
幾年も「また歌わん」と交わし来たあなたの賀状待てども届かず
相口 学
年の暮お餅つきしていそいそと帰れない息子にあれこれ送る
小豆粥「吹けばその年風ふく」と昔のいわれ今も守りて
水仙の甘き香りが冬野辺に心和みて春近きかな
山口克代
短歌講座作品1月(2021)
暮れ行く日は寒波おしよせ雪化粧賀状書きつつ善き年願う
はやぶさ2「リュウグウ」から舞い降りる玉手箱にはお土産詰めて
大櫛登美子
誕生日に息子から届いたおまんじゅう富士山の形何個もいただく
末っ子が姉ちゃんの背に追いついて静かに笑うが日常になる
暖かな初冬に出てきたビオラの芽鉢に集めて春来るを待つ
川岸有佳子
庭愛でし亡夫の自慢の老松は独居の媼に重荷となりぬ
日々新たテレビ電話の孫の貌囲炉裏のお湯もますます滾る
瀧本泰介
出来るだけ暮れの掃除もぼちぼちと「寒くはないか」と夫の声する
初雪が風に舞い散る冷たさにやはり師走と昔を偲ぶ
山口克代
児童らと給食食べた教室でワンデイカフェのコーヒーを飲む
「これええよ!」都会人へのいち推しは冬の夜空のイルミネーション
「密」を見て「疎」のわが町で思うこと も少し「密」になってほしい
相口 学
春さくら秋はもみじと身の丈に合ったトラベル思い出尽きぬ
晩秋に史跡の会にさそわれて富永望む城址に登る
音量を上げて昭和の演歌聞き今年だけはと栃の皮剥ぐ
小西みや子
短歌講座作品12月(2020)
鹿よけの柵内に咲く野紺菊の花を撫でゆく霜月の風
「紅葉なんか」と言う夫さそい三峯路に彩り最高堪能をする
秋冷えに足腰痛む日の多く薬の誇大広告入念に読む
小西みや子
山深き温泉宿に来てみれば遠方からのゴーツートラベル
星月夜すいこまれそうわれも星宇宙旅行も夢でなくなり
大櫛登美子
ひんやりと水の音にも秋深み舞ひ入る木の葉夕陽の中に
「おはよう」と鏡のわれに声をかけ今日も笑顔になれますように
大相撲もコロナの中で戦いて千秋楽も間近にせまる
山口克代
代休に息子と二人ラーメン店へしょう油ラーメン満足気にすする
スダチの実道の駅にて買い求め砂糖漬けにして湯で割って飲む
休校の波瀬小賑わうワンデイカフェ、ジビエカレーにマフィンやパンも
川岸有佳子
飯高の友と歌って三十年互いを讃え「ウインク」し合う
寿生のきらきら輝くその顔は学べることの素晴らしさ語る
毎朝の体重測定の数字にて季節の変化を感じている
相口学
朝の陽の奥まで差し込む六畳に新聞広げモズの声聞く
児らが待つ運動会のグランドに夕日の落ちて白線浮かぶ
ベランダにヤンマの骸足屈め秋風受けてカサリと動く
瀧本泰介
会計を済ました我に孫の声「奢りの鰻最高やわ」と
冬に咲く橋のたもとの四季桜儚げに見えて風にも散らず
山下恵美子
短歌講座作品11月(2020)
文明の利器のスマホに変えれどもラクラクならず四苦八苦する
四季四季に手持ちの服を廻し着て今日は秋色スーパーに行く
「生きとんもえらいんやんな」と亡媼言った身にしむ秋に齢八十
小西みや子
出されたる和菓子頬張る我を見て姪が一言「敬老の日よ」
帽子かぶり作業している我を見てかかりし一言「ぼくこれしてな」
「ごちそうさま」栗の木挟んで対峙する我に向かいて猿が一言
相口 学
「ばあちゃんが私のことを忘れたら生きていけんわ」と女孫が言う
スマホみて渋皮のまま天ぷらにカリッと揚がり渋味も残す
大櫛登美子
彼岸花墓地への道に咲き揃い「ようお参り」と静かにゆれる
はじめてのクロスワードに向き合って夕餉の支度忘れるほどに
十五夜の月がみごとに上りきて変わりゆく世を明るく照らす
山口克代
サンダルでトラクターに乗るおっちゃんの耕す後追う白鷺ふたつ
木犀の花の香りは風に乗り僕は手を止め深呼吸する
番茶刈る汗の二人にモクセイの香りを乗せた秋風の吹く
瀧本泰介
学生服の袖口伸ばしピッタリと中二の秋に胸張りて行く
今夏漬けし梅干し今が食べ頃で新米にのせ味わう朝食
川岸有佳子
白萩は風に花枝ゆらせつつモンシロチョウを遊ばせている
彼岸花は咲き誇れども葉は持たず活けるをりには茅そえてみる
予約時間あわてて入る受付に「○○先生30分遅れています」
水谷友子
散歩道ドングリ拾ってポケットに思わず歌うドングリコロコロ
延命の治療断り眠る叔母指先触れれば熱でほとりて
山下恵美子
短歌講座作品10月(2020)
文明の利器のスマホに変えれどもラクラクならず四苦八苦する
四季四季に手持ちの服を廻し着て今日は秋色スーパーに行く
「生きとんもえらいんやんな」と亡媼言った身にしむ秋に齢八十
小西みや子
出されたる和菓子頬張る我を見て姪が一言「敬老の日よ」
帽子かぶり作業している我を見てかかりし一言「ぼくこれしてな」
「ごちそうさま」栗の木挟んで対峙する我に向かいて猿が一言
相口 学
「ばあちゃんが私のことを忘れたら生きていけんわ」と女孫が言う
スマホみて渋皮のまま天ぷらにカリッと揚がり渋味も残す
大櫛登美子
彼岸花墓地への道に咲き揃い「ようお参り」と静かにゆれる
はじめてのクロスワードに向き合って夕餉の支度忘れるほどに
十五夜の月がみごとに上りきて変わりゆく世を明るく照らす
山口克代
サンダルでトラクターに乗るおっちゃんの耕す後追う白鷺ふたつ
木犀の花の香りは風に乗り僕は手を止め深呼吸する
番茶刈る汗の二人にモクセイの香りを乗せた秋風の吹く
瀧本泰介
学生服の袖口伸ばしピッタリと中二の秋に胸張りて行く
今夏漬けし梅干し今が食べ頃で新米にのせ味わう朝食
川岸有佳子
白萩は風に花枝ゆらせつつモンシロチョウを遊ばせている
彼岸花は咲き誇れども葉は持たず活けるをりには茅そえてみる
予約時間あわてて入る受付に「○○先生30分遅れています」
水谷友子
散歩道ドングリ拾ってポケットに思わず歌うドングリコロコロ
延命の治療断り眠る叔母指先触れれば熱でほとりて
山下恵美子
短歌講座作品9月(2020)
わが村のたった一人の一年生背のランドセル大きくゆらせ
口ぐせで「あんたは若い」と姉は言う言われた私「ないしょナイショ」
のびのびと育ちたる女孫ふるさとの川に飛びこむ長き手足よ
大櫛登美子
「宝箱を開けるようだった」と電話あり私の選んだふる里産品
カボチャ苗と同時に植へしペチュニアは九月に入りても咲き誇りおり
神戸からこうのとりが飛来して静かな里の大きな話題
小西みや子
嫁くれし掃除ロボットあちこちとぶつかりながら進むを見てる
コウノトリが飛来してると東京に動画送れば「のんびりで良いね」
水谷友子
夏のパワーたっぷり含んだジャンボきゅうり厚めに切ってとり肉とたく
長男の二十才を祝う小包に缶チューハイを二本しのばす
川岸有佳子
米作り失敗続きの毎日に父の苦労と偉大さを知る
「短歌見たよ」あちらこちらで聞く声に嬉しさ半分戸惑い半分
幸運ぶコウノトリ一羽舞い降りて俄に賑わう山里の秋
相口 学
今は亡き母の遺した手提げ籠壊れかけても捨てられずにいる
ピ~ヒャラと笛の音色で獅子が舞う袴ひるがえし次の家へと
山下恵美子
コロナ禍で外出控え慎ましく昭和の暮らしに想いを寄せる
朝日受けオクラの花は透きとおり心和ませ朝餉の支度
国道を走る車は忙わしげに家路にむかう秋の短日
山口克代
帰省した集合写真この夏は頭揃わず正月に期す
里芋の葉の枯れゆくを放置せず水遣る元気暑さで萎える
お彼岸の客の来訪待ちきれず外で迎へし幼時の記憶
暑さから逃れて屈んだ木陰より空見上ぐればアキアカネ群る
初盆で君の御霊を迎えしが遺せし家族の日常見るや
瀧本泰介
朝夕に水をやれども里芋は続く猛暑に葉はやけていく
夏菊を作り続けて三十五年今年はばっちり盆に咲いたわ
卵塔さん早朝参るを良しとした時代は移りて一人ぼちぼち
小西みや子
ねむの花山に咲く頃姉思う小豆の種を蒔くころですと
お互いにマスクをかけて会釈して知った人だと振り返りつつ
わが友に南高梅を頂いて土用干しする白梅甘し
大櫛登美子
コロナ禍の猛暑の続く日々なれば畑にも行けずわれ巣ごもりす
日の落ちてひぐらしようよう鳴きはじめ我等も散歩に出かけましょうか
水谷友子
緑茶氷娘と一緒に食べに行き口に広がる冷たさに笑む
盆過ぎてほんの少しの風感じ汗ふきながらドクダミ茶飲む
川岸有佳子
二年が退職祝いの包丁を今一番の愛用品とする
コロナで着 熱中症で脱 ならば半分マスクじゃだめかしら
高一で渋々始めたコーラスが我が人生に彩りを添う
相口 学
雨欲しい 梅雨ともなれば太陽の恋し勝手なものよと雲の流れる
雨あがり雲が生まれるかのように山からのぼる水蒸気あまた
道野辺にか細き茎のネジバナはまがりまがりて空めざしをり
水谷友子
谷間のササユリ眺め田植えした六月の風に結い返し偲ぶ
ステイホームでラジオ体操試みて油不足の身体を曲げる
親戚が全員マスクし訪ね来る高齢私を気遣いながら
大櫛登美子
捨てられずしまい込んでた着物出し求めし時の思いに浸る
風のあるつゆの晴れ間に開け放し腰伸ばしつつ掃除機を曳く
釣り難い櫛田の川の若鮎を今年は甘露煮にして夕餉に頂く
小西みや子
頂いた何年物かの梅干しをジャムに再生トーストにぬる
マラソンの練習に励む「およちゃん」にサザンカ色の絆を贈る
「何かに使って」と不用の生地を送ったらチュニック作り送ってくれた母
川岸有佳子
スタバにてスマホ片手に思案する画面の中にはオレンジページ
帰宅から就寝時まで一緒ですキミの想いをひしと感じる
四十年前の友らと語り合うラインの中の私は二十歳
相口 学
「美味しいよね」そんな言葉に励まされ世話した南瓜を野猿に盗る
鰻食べ皆淡々と店を出る私ら二人は満ち足りてをり
自走する茶刈り機械を飽きもせず見入る童の横顔涼し
水谷友子 作
大櫛登美子 作
川岸有佳子 作
瀧本泰介 作
短歌講座作品4月(2020)
小西みや子作
短歌講座作品3月(2020)
短歌講座作品2月(2020)
短歌講座作品1月(2020)
短歌講座作品 9月
短歌講座作品11月
短歌講座作品3月(2019)
短歌講座作品4月(2019)
短歌講座作品6月(2019)













